高性能熱可塑性エラストマー 〈セプトン®〉
〈セプトン〉は、クラレが開発した水添スチレン系熱可塑性エラストマーです。〈セプトン〉は多くの熱可塑性エラストマー(TPE)コンパウンドに使用され、様々な形態での加工が可能です。一部の銘柄は各種認証を取得しており、日用品、メディカル部品、自動車用部品、オイルの改質に使用されています。このスチレン系TPEは、熱可塑性エラストマーコンパウンド、樹脂改質、接着剤、軟質塩ビの代替品、制振製品など、幅広い用途に対応しています。
水添スチレンブロック共重合体(Hydrogenated Styrenic Block Copolymers, HSBC)は、ポリスチレンのハードブロックと柔軟なポリオレフィン構造(水添ポリジエン)のソフトブロックから構成されています。ハードブロックがポリスチレンのガラス転移温度(Tg)以下で架橋点として働き、ソフトブロックが弾性を発揮するため、ゴムのような弾性を示します。また、ソフトブロックが未水添であるスチレン系エラストマーと比べ、水添により優れた耐熱性・耐候性を誇ります。
目次
特徴
- 優れた材料特性
- 耐候性
- 耐薬品性(酸、アルカリ、アルコール)
- 低温特性
- 安全性・衛生性
- 耐熱性
- 電気特性(絶縁性)
- ゴムのような弾性
- リサイクル可能
強み
- 加工性に優れる
- 耐久性
- 品質を長期的に維持可能
- 安全性
- ゴムの代替として使用可能
- 軟質塩ビの代替として使用可能
使用例
- 接着剤、コーティング剤、シーリング材
- 熱可塑性エラストマーコンパウンド
- 日用品
- 電子部品
- 建築建材部品
- メディカル部品
- 自動車用部品
- オイル改質剤
- スポーツ用品、靴
- 3Dプリンティング用の原料
〈セプトン〉 標準グレード
〈セプトン〉は、スチレン含有量が低いものから高いものまで、また低分子量から超高分子量のものまで、多岐にわたります。また、ソフトブロック構造では、SEP、SEPS、SEEPS、SEBSの4種類があります。
〈セプトン〉には、柔軟な低スチレン銘柄から剛直な高スチレン銘柄まで、また、流動性の高い低分子量銘柄から、力学物性に優れた高分子量銘柄まで、さまざまな銘柄があります。それぞれが異なる特性を持ち、多種多様な用途に使用できます。これらの製品は、広い温度範囲でゴムのような特性を示します。〈セプトン〉は、ソフトブロックが未水添であるスチレン系エラストマーと比較して、引張強度、耐熱性、耐候性、耐オゾン性に優れ、ポリオレフィンとの相容性でも優位性を発揮します。
〈セプトン〉 1000-シリーズ(SEP)
〈セプトン〉1000-シリーズは、ジブロックタイプです。スチレン-エチレン-プロピレン(SEP)構造を持つため、透明性と流動性に優れています。主な用途としては、接着剤、シーリング材、自動車用部品、ワイヤーケーブル充填剤、化粧品、オイル改質、粘度指数向上剤(VII)などが挙げられます。また、〈セプトン〉 1000-シリーズは、不飽和ポリエステルの改質剤としても使用できます。
銘柄 | タイプ | スチレン含有量 (wt%) | MFR | 溶液粘度 (トルエン溶液30℃) | 形状 | 硬度(TypeA) | |||
230 °C, 2.16 kg (g/10min) | 200 °C, 10 kg (g/10min) | 5wt% (mPa·s) | 10wt% (mPa·s) | 15wt% (mPa·s) | |||||
1020 | SEP | 36 | – | 1.8 | – | 40 | – | クラム | 70 |
〈セプトン〉 2000-シリーズ(SEPS)
スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)構造は、一般的に結晶化せず、優れた引張伸び特性と低温特性を示します。〈セプトン〉 2000-シリーズは、様々な硬度の銘柄があり、接着剤や家電製品、メディカル用品、おむつを含む日用品など、さまざまな用途に使用されています。
銘柄 | タイプ | スチレン含有量 (wt%) | MFR | 溶液粘度 (トルエン溶液30℃) | 形状 | 硬度(TypeA) | |||
230 °C, 2.16 kg (g/10min) | 200 °C, 10 kg (g/10min) | 5wt% (mPa·s) | 10wt% (mPa·s) | 15wt% (mPa·s) | |||||
2002 | SEPS | 30 | 70 | 100 | – | – | 25 | ペレット | 80 |
2004F | SEPS | 18 | 5 | – | – | – | – | ペレット | 67 |
2005 | SEPS | 20 | No flow | No flow | 40 | 1700 | – | クラム | – |
2006 | SEPS | 35 | No flow | No flow | 27 | 1220 | – | クラム | – |
2063 | SEPS | 13 | 7 | 18 | – | 29 | 140 | ペレット | 36 |
2104 | SEPS | 65 | 0.4 | 22 | – | – | 22 | ペレット | 98 |
〈セプトン〉 4000-シリーズ(SEEPS)
〈セプトン〉 4000-シリーズ(スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン=SEEPS)は、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)よりも優れた引張強度、高いオイル保持力、PEとの良好な相容性を誇り、同時に、適度な伸びと優れた吸油性を示します。
また、〈セプトン〉 4000-シリーズにはさまざまな分子量の銘柄があります。特に高分子量銘柄では、引張強度と圧縮永久歪みに優れます。自動車用部品、化粧品やおむつなどの日用品、スポーツ用品、メディカル用品など、豊富な用途に使用されています。また、〈セプトン〉 4000-シリーズを使用したゴムのようなコンパウンドは、複数の用途で軟質塩ビの代替として使用可能です。
銘柄 | タイプ | スチレン含有量 (wt%) | MFR | 溶液粘度 (トルエン溶液30℃) | 形状 | 硬度(TypeA) | |||
230 °C, 2.16 kg (g/10min) | 200 °C, 10 kg (g/10min) | 5wt% (mPa·s) | 10wt% (mPa·s) | 15wt% (mPa·s) | |||||
4030S | SEEPS | 20 | 1.0 | 1.5 | – | 81 | – | クラム | 67 |
4033 | SEEPS | 30 | < 0.1 | < 0.1 | – | 50 | – | クラム | 76 |
4044 | SEEPS | 32 | No flow | No flow | 22 | 460 | – | クラム | – |
4055 | SEEPS | 30 | No flow | No flow | 90 | 5800 | – | クラム | – |
4077 | SEEPS | 30 | No flow | No flow | 300 | – | – | クラム | – |
4099 | SEEPS | 30 | No flow | No flow | 670 | – | – | クラム | – |
〈セプトン〉 8000-シリーズ(SEBS)
〈セプトン〉 8000-シリーズは、HSBCの中で最も一般的なミッドブロック構造を持つ水添SEBSタイプです。適度な引張強度を有し、自動車用部品やパーソナルケア製品に広く使用されています。
銘柄 | タイプ | スチレン含有量 (wt%) | MFR | 溶液粘度 (トルエン溶液30℃) | 形状 | 硬度(TypeA) | |||
230 °C, 2.16 kg (g/10min) | 200 °C, 10 kg (g/10min) | 5wt% (mPa·s) | 10wt% (mPa·s) | 15wt% (mPa·s) | |||||
8004 | SEBS | 31 | < 0.1 | < 0.1 | – | 40 | – | クラム | 80 |
8006 | SEBS | 33 | No flow | No flow | 42 | – | – | クラム | – |
8007L | SEBS | 30 | 0.3 | – | – | 25 | – | ペレット | 77 |
〈セプトン〉 HG-シリーズ(SEEPS-OH)
〈セプトン〉 HG-シリーズ(SEEPS-OH=水酸基含有スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)は、片末端に水酸基を有している点が特徴であり、反応をコントロールすることができます。〈セプトン〉 HG252は、極性樹脂の改質剤、極性/非極性樹脂の相容化剤として使用されます。
銘柄 | タイプ | スチレン含有量 (wt%) | MFR | 溶液粘度 (トルエン溶液30℃) | 形状 | 硬度(TypeA) | |||
230 °C, 2.16 kg (g/10min) | 200 °C, 10 kg (g/10min) | 5wt% (mPa·s) | 10wt% (mPa·s) | 15wt% (mPa·s) | |||||
HG252 | SEEPS-OH | 28 | 26 | – | – | – | 70 | ペレット | 80 |
製品カタログ
〈セプトン〉
〈ハイブラー〉
〈セプトン〉 特殊グレード(特殊銘柄)
クラレは独自のポリマー合成・改質技術を用い、いくつもの独自の〈セプトン〉シリーズを開発してきました。〈セプトン〉 J-シリーズの柔らかな使用感や〈セプトン〉 V-シリーズの優れた耐熱性、耐油性など、幅広い製品特性を網羅しています。
クラレは、さらに新シリーズとして、水添スチレン・ファルネセンブロック共重合体(HSFC)〈セプトン〉 BIO-シリーズを開発しました。 〈セプトン〉 BIO-シリーズは、サトウキビ由来の再生可能なモノマーであるβ-ファルネセンから合成されており、バイオマス比率は最大80%に達します。この〈セプトン〉 BIO-シリーズは、TPEコンパウンド、靴などのスポーツ製品など、幅広い用途に適しています。〈セプトン〉 BIO-シリーズを使用することで、従来のTPEを上回るカーボンフットプリントを達成可能です。詳細については、お気軽にお問い合わせください。
〈セプトン〉 Q-シリーズは、柔らかさと弾性回復性を兼ね備えた熱可塑性エラストマーです。〈セプトン〉 Q-シリーズを使用したコンパウンドは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)や熱可塑性アミド系エラストマー(TPAE)などの他の熱可塑性エラストマー(TPE)に匹敵する機械的特性を持ち、しかもこれらの素材に比べて低比重であるため製品の軽量化に貢献します。
〈セプトン〉 V-シリーズは、反応性(架橋性)を有するハードブロックと、ソフトブロックを持つブロック共重合体です。〈セプトン〉 V-シリーズは、ハードブロックの架橋により、良好なゴム弾性と低温特性を維持しながら、優れた耐熱性、長期圧縮永久ひずみ、耐油性を示します。〈セプトン〉標準グレードを使用したコンパウンドと比較して、〈セプトン〉 V-シリーズを使用したコンパウンドは耐熱性が向上します。
〈セプトン〉 J-シリーズは、クラレ独自の高機能ゲル用素材です。優れた衝撃吸収性・制振性と非アレルギー性を兼ね備えています。また、粘度が低く、低温・低せん断速度での優れた加工性などの特徴により、加工の幅が広がり、柔軟なコンパウンドを得ることができます。
〈セプトン〉F-シリーズ」は、クラレがパーソナルケア&衛生(リンク)業界向けに開発した最新製品です。クラレの最新の開発技術は、優れた保持力と廃棄物削減を両立させ、赤ちゃんのお肌を守るクラレ独自の技術で、紙おむつ弾性部材の差別化要素として注目されています。
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