溶剤型接着剤と無溶剤型接着剤の比較:どちらが良いでしょうか?

溶剤型接着剤と無溶剤型接着剤の比較:どちらが良いでしょうか?

接着剤を使用する場合、溶剤型接着剤と無溶剤型接着剤のどちらが、お客さまの用途に最適かを判断する必要があります。無溶剤型接着剤は、使用者にとっても環境にとってもより安全ですので、ますます人気が高まっています。

溶剤型と無溶剤型にはそれぞれ長所と短所がありますが、用途によってどちらが適しているか決まっていることがほとんどです。この記事では、これら2つのタイプの接着剤の長所と短所を取り上げます。

接着剤は、包装からスマートフォンまで、あらゆるものの製造のカギを握っています

溶剤型接着剤とは?

溶剤型接着剤では、接着性の化合物は液体溶剤によって溶解・希釈されます。これにより、接着剤は多孔質、非多孔質を問わず、塗布されたどのような表面にもスムーズかつ均一に広がります。

有害な溶剤を 5%以上の濃度で含む接着剤は、溶剤型とみなされます。

のように人体にも環境にも無害な溶剤は、有害とはみなされません。このような溶剤で製造された接着剤は溶剤型とはみなされません

n-ヘキサンのような可燃性神経毒性を併せ持つ溶剤は有害とされています。ある種の速乾性接着剤のように、これらの溶剤を5%以上含む接着剤は溶剤型とみなされます

溶剤型接着剤の長所

溶剤型接着剤の主な利点は、強力な接着力が容易に得られることです。溶剤型接着剤では、溶剤が接着成分を溶かして行き渡らせるため、接着剤が表面に広がりやすく、素早く濡れて強力な初期接着力を発揮します。

強力な溶剤は、塗布する際、エッチングにより表面を粗くすることもできるため、より強固な接着が可能になり、基材を準備するための余分なエッチング工程が不要になる可能性もあります。さらに、これらの接着剤に含まれる溶剤は蒸発が早いことが多く、乾燥時間が短縮されます。

溶剤型接着剤は、含まれる溶剤の特性により、大部分の無溶剤型接着剤よりも温度安定性、耐薬品性、耐候性に優れています

強力な溶剤型接着剤は自動車製造によく使われます

溶剤型接着剤の短所

溶剤型接着剤の多くは、溶剤として揮発性有機化合物 (VOC)を使用しています。これらの溶剤は素早く簡単に蒸発するため、乾燥は早いものの、その他多くの欠点を有しています。

溶剤型接着剤に含まれるVOCは容易に蒸発するため、吸入されやすく可燃性のガスや不快な臭気を発生させ、重大な健康被害や火災の危険をもたらします。すべてのVOCが毒性や引火性において同じように危険なわけではありませんが、ほとんどのVOCは安全に取り扱うには注意が必要です。

VOC溶剤はまた、大気中の窒素酸化物と結合してスモッグを形成し、気候変動の一因となっています。VOC蒸気による有害な影響に加え、溶剤型接着剤による意図的でないエッチング効果は、基材によっては表面を傷つけることがあります。

さらに、VOCを含む製品を他国よりも厳しく規制している国もあります。これらの国々では、溶剤型接着剤の輸入、輸出、または溶剤型接着剤を使用した作業は、無溶剤型接着剤を使用した作業よりも高コストであったり、集約的であったりする場合があります。

保護具を着用して溶剤型接着剤を塗布する作業員

溶剤型接着剤の価値とは?

溶剤型接着剤は、無溶剤型接着剤よりも耐候性、耐薬品性に優れていることが多く、強力な溶剤により強度の高い接着を迅速に形成することができます。しかし、溶剤型接着剤はコストが高く、使用に際して危険が伴います。一方、無溶剤型接着剤は、技術の進歩により、多くの用途において溶剤型接着剤の代替となってきています。

表面が非常に汚染された基材を扱う場合などでは、溶剤型が唯一の選択肢となることもありますが、溶剤型接着剤を選ぶ前に、必ず無溶剤型の選択肢を検討すべきです。

溶剤型接着剤を塗布する際のコツ

溶剤型接着剤で安全に作業する鍵は換気です。ほとんどの溶剤型接着剤は、乾燥すると有毒で可燃性のガスを発生します。特に狭い場所で作業する場合は 、適切な換気を行ってください。

安全対策を万全にし、接着剤を最大限に活用するために、必ずメーカーの塗布ガイドラインに従ってください。これらの予防措置は、溶剤による環境の汚染を防げませんが、作業者の安全を確保することはできます。

溶剤型接着剤を使用する化学設備向け換気システム

無溶剤型接着剤とは何ですか?

無溶剤型とみなされるには、接着剤に含まれる有害溶剤が5%未満でなければなりません。無溶剤型と分類される接着剤の中にも、有害な溶剤がわずかながら含まれているものがあります。

溶剤を使用せずに効果的な接着剤を作るために、無溶剤型の製品は接着成分を行き渡らせるために水など代替の無害な溶剤を使用することがあります。また、ホットメルト接着剤や非溶剤接着剤のように、溶剤の使用を完全に回避することもできます。

無溶剤型接着剤は、製造からラベル貼付までの用途に有用です。

用途

無溶剤型接着剤は、VOCレベルが大幅に削減されているため、幅広い用途に使用できます。次のような用途には、無溶剤型接着剤を選ぶとよいでしょう。

無溶剤型接着剤の種類

現在入手可能な無溶剤型接着剤には、主に3つのタイプがあります。

水性分散体は 、水ベースで溶剤を含まない接着剤です。これらの製品では、水が接着成分を行き渡らせ、水が蒸発すると硬化します。こうした水性接着剤は、無溶剤型接着剤を実現させるために従来から用いられています

無溶剤接着剤は高粘度の非液体製品です。その高い粘性によって、2つの表面をくっつけて固定することができます。かつてはキャンディーの包装紙など、需要の少ない用途にしか使われていませんでしたが、無溶剤型接着剤の進歩により、あらゆるラミネート加工に使われるようになりました。

ホットメルト接着剤 は完全固形の ポリマー接着剤です。高温では、これらの熱可塑性プラスチックは溶融して、優れた流動性を持つ液体となり、その後数秒で冷却され、強い結合を形成します。 ホットメルト接着剤は乾燥の必要がないため、生産効率が高くなります。

この製本用接着剤のような水性分散体は、従来の接着剤に近い働きをします。

無溶剤型接着剤の長所

無溶剤型接着剤の主な利点は、VOCの大幅な削減にあります。

これらの接着剤にはごくわずかな量のVOCしか含まれていないため、危険なガスはほとんど発生せず、火災や健康被害を防ぐために換気やその他の安全対策を講じる必要はありません。また、接着剤を輸出入する際の溶剤関連の規制や制限を管理する負担も軽減できます。この利点は、VOCを含む製品に厳しい基準を設けている国では特に重要になります。

無溶剤型接着剤は、職場における強い臭気や危険性を排除するだけでなく、スモッグの原因となるVOC蒸気をほとんど発生させないため、環境にとっても安全です。

無溶剤型接着剤は、靴作りのような対象と近接して行う作業をより安全なものにします

無溶剤型接着剤の短所

長い道のりを経た技術の進歩により、かつて無溶剤型接着剤に付随していた短所の多くが解消されました。

いくつかの特定の接着剤にはそれぞれ欠点がありますが、ほとんどの無溶剤型接着剤には共通の欠点―耐候性の低さ―があります。溶剤を含む接着剤は、通常、さまざまな温度への曝露に耐えることができます。

耐候性に優れた無溶剤型接着剤

クラリティ™ は、そのオール・アクリル構造により、光学的透明性と高い耐候性をもたらす、透明なTPEです。詳細については、弊社の専門家がご説明いたします。

無溶剤型接着剤の価値とは?

無溶剤型接着剤は、ほとんどの用途で同等の性能を発揮しながらも、溶剤型を選択した場合に随する煩雑さの多くを回避できるという利点があります。安全性の向上、少ない規制、低毒性は、無溶剤型接着剤の主な利点です。

無溶剤型接着剤は、消費財(紙おむつや食品包装を含む)や 医療用などの、化学的安全性に細心の注意を払わなければならない用途で特に有用です。また、溶剤型接着剤からはガスが発生しますが、そうしたガスの換気が困難な場所でも使用できます。

無溶剤型接着剤を塗布する際のコツ

無溶剤型接着剤は、水性接着剤から無溶剤接着剤、ホットメルト接着剤まで、その形態が非常に多岐にわたるため、塗布や硬化の方法もさまざまです。無溶剤型接着剤を使用する前に、その硬化と塗布プロセスを正しく理解してください。

クラリティ™:弊社が提供する無溶剤型接着剤用素材

クラリティ™は透明なTPEで、無溶剤型接着剤のためのクラレの解決策です。クラリティ™はリビングアニオン重合によって製造されるアクリル系ブロック共重合体で、無溶剤のホットメルト感圧接着剤として使用されます。

クラリティ™はオールアクリル構造で、光学的透明性と高い耐候性を備えています。分子量分布が狭いため、クラリティ™は低粘度で良好な再剥離性を示します。

何よりも、クラリティ™はそのブロック共重合体構造により、物理的架橋による自己組織化が可能であり、エージングプロセスを省略することができます。

クラリティ™を使用すれば、UV硬化や乾燥工程がなく、VOCと臭気を最小限に抑えたシンプルな工程を実行できます。

クラリティ™についての詳細は弊社の専門家がご説明いたします。

クラリティ™

製品カタログ

〈クラリティ〉─アクリル系ブロック共重合体

Technical insights

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ポリマー接着剤とは

ポリマー接着剤とは

ポリマー接着剤は、ポリマーからなる接着剤です。ポリマーは、「モノマー」と呼ばれるサブユニットが連なって結合した大きな分子です。

これらの接着剤は、金属、プラスチック、木材、ガラス、セラミックなどのさまざまな基材と複合材料を強力に接着することができます。

ほとんどのポリマー接着剤は合成された人工材料になります。柔軟性、耐熱性、耐薬品性、導電性など、用途に応じた特性を持たせることができます。

ポリマー接着剤の作用とは

ポリマー接着剤は、あらゆる接着プロセスで作用する2つの力を利用します。すなわち、接着力と凝集力です。

接着力と凝集力

接着力とは、2つの異なる物質の分子をくっつける力のことです。例えば、水滴がガラスの表面に付着するのは、水分子とガラス分子との間の接着力によるものです。

ガラス表面への水滴の付着(接着)

凝集力とは、同じ種類の分子同士を結びつけておく力のことです。例えば、グラスに水を上まで満たし、さらに数滴注意深く加えると、水がグラスの縁の上にドーム状の構造を形成するのを観察することができます。この現象は表面張力と呼ばれ、水分子間の水素結合の凝集力によって引き起こされます。この凝集力により、表面積の大きい軽い物体は、アメンボやこのクリップのように水面に浮いていることができます。凝集力によって、雨が細かい霧ではなく水滴の形になる理由も説明できます。

水の表面張力(凝集力)

ポリマー接着剤が機能するには、接着力と凝集力の両方が必要です。接着力が弱すぎると、接着剤はその場で基材にくっつきません(接着不良)。凝集力が弱すぎると、接着剤はそれ自体を維持できなくなります(凝集破壊)。

接着力と凝集力

結合

結合には、静電的結合、機械的結合、化学結合の3種類あります。

静電的結合

静電的結合は、イオン間の「吸着」力、すなわち磁石のように引き合う接着剤の荷電分子と、逆の極性に荷電した基材分子との間の「吸着」力に依拠しています。これらの力は、それを発見した研究者の名前にちなんで「ファン·デル·ワールス力」とも呼ばれています。

静電的結合は比較的弱い結合です。この接着がうまくいくのは、接着剤が基材上に広がり、表面がよく濡れ、互いの表面が非常に接近している場合に限られます。

静電的結合と機械的結合は比較的弱結合で、化学結合は比較的強い結合です。

機械的結合

機械的結合は、接着剤が基材表面の穴から流れ込んだり、突起物に付着したりすることを利用します。このような接着は、基材の表面にシボや小さな穴がたくさんある場合に効果的です。

化学結合

化学結合は、接着剤の分子と基材の分子の間の化学反応に依拠しています。そのためには、接着剤と基材が化学的に相溶性であることが必要で、そうでなければ反応は起こりません。

物質が相溶性であれば、はるかに弱い静電的結合に比べ、非常に強い化学結合が形成されます。

場合によっては、相溶性のない化学物質同士が、カップリング剤を介することによって間接的に化学結合することもあります。

参考情報

カップリング剤は、2つの異なる物質間の相互作用を改善するという意味で、相溶化剤と同様の役割を持ちます。ただし、カップリング剤は接着能力を向上させ、相溶化剤は混和性を向上させるという違いがあります。

熱可塑性接着剤と熱硬化性接着剤の比較

接着剤を分類する方法はたくさんあります。その中でも、分子構造に基づく熱可塑性接着剤と熱硬化性接着剤の区別は重要です。

熱可塑性接着剤

熱可塑性接着剤は、常温で強力な接着力を発揮し、劣化することなく溶解させて再加工することができます。

以下のような例があります。

  • PVA / PVAc(ポリ酢酸ビニル、木工用接着剤としても知られています)
  • EVA (エチレン-酢酸ビニル共重合体)
  • PE (ポリエチレン)
  • PP (ポリプロピレン)
  • PA (ポリアミド)
  • ポリエステル
  • アクリル
  • ニトロセルロース(硝酸セルロース)
ホットメルト接着剤は熱可塑性です。

熱硬化性接着剤

熱硬化性接着剤は、硬化時に強力で恒久的な架橋を形成します。これにより、恒久的で、耐熱性があり、劣化もせず変質することもない不溶性の結合が形成されます。

以下のような例があります。

  • フェノール類(フェノール-ホルムアルデヒド樹脂)
  • 尿素ホルムアルデヒド(尿素ホルムアルデヒド樹脂) 
  • エポキシ(エポキシ樹脂、別名ポリエポキシド)
  • 不飽和ポリエステル
  • ポリウレタン
エポキシ接着剤は熱硬化性です。

主なポリマー接着剤の種類

ポリマー接着剤は、その用途によって分類することもできます。接着剤の主な種類は以下の通りです。

  1. 構造用接着剤
  2. エンジニアリング接着剤
  3. ホットメルト接着剤
  4. 感圧接着剤
  5. UV硬化型接着剤

構造用接着剤

構造用接着剤は、金属、複合材料、プラスチック、ガラス繊維、木材、石材など、さまざまな材料と強力に結合するように設計されています。

高い耐荷重性、長期耐久性、耐熱性、耐溶剤性が要求される用途に使用されます。とりわけ、構造用接着剤は、釘、ネジ、リベット、ボルト、溶接を伴う他の接合方法の代わりとなったり、補完したりすることができるという特徴があります。

構造用接着剤の主な種類は以下の通りです。

  1. エポキシ接着剤は、エポキシ樹脂と硬化剤からなる1液型または2液型の接着剤です。高い強度と優れた耐熱性、耐薬品性で知られ、モビリティ用工業用、建設用として人気があります。それだけでなく、電気絶縁性も高いため、電子部品にも適しています。
  2. ポリウレタン接着剤は、優れた柔軟性、耐衝撃性、振動減衰特性を示します。自動車、船舶、航空宇宙などのモビリティ分野でよく使用されています。
  3. アクリル系粘着剤は、速硬化性、優れた接着強度、強靭性、耐久性、優れた耐熱性、耐薬品性を備えています。耐油性のない接着剤が使えないような油性の環境でもよく使われます。例えば、モビリティ工業·建設電子機器、パッケージングなどの分野です。

まとめると、構造用接着剤にはさまざまな種類があり、モビリティ電子機器工業、建設など、さまざまな産業にとって魅力的な選択肢となっています。

構造用接着剤の用途

エンジニアリング接着剤

エンジニアリング接着剤に正式な定義はありませんが、構造用接着剤に比べ、強度要件がそれほど厳しくない高性能接着剤と考えることができます。工業製品の幅広い接着用途における様々なニーズに合わせて開発されています。

構造用接着剤と同様に、エンジニアリング接着剤にも3つの主要なタイプがあります。

  1. 嫌気性接着剤 (表面活性化アクリルとも呼ばれる)は、空気がなく、金属イオンが存在すると硬化します。したがって、ボルト、ネジ、ナットなどのネジ付き金属部品の固定やシールに適しています。このため、「スレッドロッカー(ネジロック剤)」とも呼ばれます。密閉性、耐振動性、耐薬品性、カスタムトルク値(制御された摩擦)が必要な場合に有用です。
  2. シアノアクリレート系接着剤は、瞬間接着剤としても知られています。硬化時間は数秒から数分と非常に短くなっています。その他の利点としては、強力な接着強度、様々な表面素材への良好な接着性、良好な耐熱性·耐薬品性、優れた透明性などが挙げられます。電子機器、木工、医療(承認が必要)、工芸など、さまざまな産業における小さな部品や表面の接着に最適で、一般家庭でもよく使われています。
  3. シリコーン接着剤は、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れています。用途が広く、柔軟性があり、信頼性の高いシールを形成することができます。その用途は、モビリティ電子機器工業·建設医療(承認が必要)、家庭用など多岐にわたります。

エンジニアリング接着剤には、多くの産業で重要な役割を担っている理由となるユニークな硬化メカニズム、機能、特性があります。

「スレッドロッカー(ネジロック剤)」はエンジニアリング接着剤の一例です。

ホットメルト接着剤

ホットメルト接着剤は熱可塑性接着剤です。熱の影響を受けても劣化することなく溶融し、高温の液体として溶融状態で接着面に塗布することができます。冷却すると固化し、強固な結合を形成します。

ホットメルト接着剤に使われるポリマーの一般的な例としては、以下のようなものがあります。

  • EVA (エチレン-酢酸ビニル共重合体)
  • ポリオレフィン:アタクチックポリプロピレン(APP)、非晶性ポリアルファオレフィン(APAO)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)など。
  • PA (ポリアミド)
  • ポリエステル
  • ポリウレタン
  • スチレン系ブロック共重合体
  • アクリル系ブロック共重合体
  • ブチルゴム
  • EPR(エチレン·プロピレンゴム)
  • SBR (スチレン·ブタジエンゴム)

これらのポリマーは、添加剤を配合して、粘着特性やその他の性能特性を改良することができます。そのような添加剤の例としては、粘着付与剤、ワックス、可塑剤、充填剤、酸化防止剤などの安定剤が挙げられます。

ホットメルト接着剤は、さまざまな素材への迅速な接着を可能にします。アプリケーター·システムやグルーガンで簡単で正確に塗布することができます。無溶剤接着剤は、潜在的な危険性のあるVOC(揮発性有機化合物)を含まないため、溶剤形接着剤よりも安全で環境に優しいです。いったん冷えて固まると、環境温度が融点以下にとどまる限り、概して良好な耐熱性を発揮します。

ホットメルト接着剤塗布システム

感圧接着剤(PSA)

感圧接着剤(PSA)は圧力をかけると活性化します。そして基材との結合が開始されます。一般に、接着の強さは加える圧力の大きさに左右されます。

ほとんどのPSAは一般的な室温範囲では機能しますが、高温または低温では機能しません。圧力を加えると活性化します(熱、溶剤、水による硬化は必要ありません-ただし、例外あり)。

テープ、ラベル、ステッカーは、PSAの一般的な用途です。PSAは、光学フィルム、表面保護フィルム、パーソナルケア、医療(要承認)用途にも使用されます。要求特性を達成するために、化学添加剤や改質剤をその製造や塗布時に使用することができます。

テープやラベルは感圧接着剤を使用しています。

UV硬化型接着剤

UV硬化型接着剤は、紫外線(UV)にさらされると硬化します。その硬化は、紫外線を活性化エネルギー源とする光重合と呼ばれる化学反応に依拠しています。エネルギーは光重合開始剤に吸収され、液状ポリマー接着剤を固体または高度に架橋された状態に変えます。

UV硬化型接着剤は、わずか数秒から数分という迅速な硬化が特徴です。ガラス、プラスチック、金属、セラミックなどさまざまな表面に強力な結合を形成でき、耐薬品性、耐熱性、耐湿性にも優れています。

用途としては、電子機器医療(承認が必要)、モビリティスポーツ用品や靴などがあります。UV硬化型接着剤には、液状で直接塗布されるものもあれば、テープやラベルの接着面の一部となるものもあります。

UV硬化型接着剤

最適なポリマー接着剤の選び方

以下は、あなたの用途に最適なポリマー接着剤を選択する際に取るべき手順です。

  1. 結合基材を理解する
  2. 塗布中のオープンタイム(セットアップ完了までの時間)とキュアタイム(接着部品が使用可能になるまでの時間)を決める
  3. 塗布と硬化の方法を判断する
  4. 性能特性(強度、柔軟性、硬度、粘度、振動減衰性、色など)を特定する
  5. 環境条件(温度、湿気、化学暴露、紫外線)を理解する
  6. テストの実施
  7. 健康と環境への配慮
  8. コストと入手の容易さを勘案

これらのステップにおいて、技術資料を参照したり、専門家からアドバイスを受けたりして、最適なポリマー接着剤を選ぶようにしてください。

多くの場合、化学添加剤や改質剤を加えて、用途のニーズに合わせて粘着ポリマーを精密にカスタマイズすることができます。弊社の専門家が喜んでアドバイスいたします。

クラレの高分子接着材料

クラレは、ポリマー接着剤用途に幅広い特殊ポリマーを提供しています。これらの中には、接着剤のベースポリマーとして使用できるものもあれば、接着剤の性能特性を向上させるための添加剤となるものもあります。

<セプトン>と<ハイブラー>について

<セプトン>と<ハイブラ->は汎用性の高い高性能熱可塑性エラストマー(TPE)です。そのスチレン系ブロック共重合体(SBC)の分子構造は、ゴムのような弾性と熱可塑性加工性の利点を兼ね備えています。

<セプトン>は、広い温度範囲で優れた性能を発揮し、耐薬品性、耐候性、紫外線耐性、電気絶縁性にも優れています。

〈ハイブラー〉には、耐久性のある水添系銘柄(〈ハイブラー〉7000-シリーズ)と未水添系銘柄(〈ハイブラー〉5000-シリーズ)があります。〈ハイブラー〉は高い制振性能を発揮します。〈ハイブラー〉7000-シリーズは、ポリプロピレンとの相溶性に優れています。

<セプトン>と〈ハイブラー〉は、ホットメルト接着剤のベースポリマーとして、あるいはポリオレフィン系接着剤の添加剤として使用することができ、その柔らかさ、伸縮性、耐衝撃性、粘着性、凝集力をカスタマイズすることができます。

セプトン™

クラレ液状ゴム

<クラレ液状ゴム>は 「反応性可塑剤」のように作用して、コンパウンドの流動性を向上させ、粘度を下げます。<クラレ液状ゴム>シリーズには、液状ブタジエンゴム(L-BR)、液状イソプレンゴム(L-IR)、液状スチレン-ブタジエンゴム(L-SBR)などがあります。

<クラレ液状ゴム>をポリマー接着剤の添加剤として使用すると、接着強度や粘着性を向上させる改質剤として機能します。官能化グレードは、金属、ガラス、繊維などの基材への接着性を向上させることができます。UV硬化グレードはUV硬化型接着剤の成分として使用できます。

クラレ液状ゴム

液状ファルネセンゴム

液状ファルネセンゴムは、再生可能な原料であるサトウキビから得られるバイオ由来のモノマーであるβ-ファルネセンをベースとする液状ゴムです。液状ファルネセンゴムを使用することで、メーカーは製品中のバイオ由来原料の含有量を増やすことができます。

分岐した分子構造、低粘度、高分子量に起因する高い反応性により、液状ファルネセンゴムは粘着性や凝集力といった接着特性を改質することができます。

液状ファルネセンゴム

透明なTPE、クラリティ™

透明なTPEである<クラリティ>は、実にユニークな特性を持つアクリル系ブロック共重合体です。自己接着性があり、透明度が高く、柔軟性があり、優れた性能特性、耐候性、加工性を有しています。

<クラリティ>は接着剤のベースポリマーとして、あるいは従来の接着剤の改質剤として使用できます。優れた柔軟性と自己接着性により、<クラリティ>は可塑剤や粘着剤がなくても使用できます。低臭気性でホットメルト適合性があるため、溶剤を使用しない接着剤への使用が可能になり、溶剤を使用する工程で生じる健康上の懸念や換気の必要性がなくなります。<クラリティ>はテープやラベルに用いることもできます。

<クラリティ>は剥がしても従来の接着剤に比べて残渣が非常に少なく、再加工が容易になります。また、粘着剤に<クラリティ>を使用することで、型抜き性や形状安定性に優れ、目的の形状を長時間保持することができます。

<クラリティ>が提供するもう一つの重要な利点は、食品関連用途にも使用できることです。国によっては、<クラリティ>はそのような用途に必要な承認を得ています。詳しくは、お問い合わせフォームより<クラリティ>チームまでご連絡ください。

透明なTPE、クラリティ™

イソバン™

<イソバン>は、イソブチレンと無水マレイン酸のアルカリ水溶性共重合体です。<イソバン>は、木工用ポリ酢酸ビニルのエマルジョン接着剤の添加剤として使用できます。<イソバン>は初期粘着性と耐熱性を向上させることができます。


イソバン™

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射出成形とは?

射出成形とは?

射出成形とは、プラスチック部品を大量に生産するために広く用いられている製造プロセスです。このプロセスでは、射出成形機を使って材料を溶かし、圧力をかけて金型に注入し、冷却後に希望の形状の部品を作り出します

日常生活におけるプラスチック部品の大部分は射出成形で作られています。これらの部品としては、歯ブラシ、車の部品、台所用品のハウジングなどが挙げられます。

射出成形は、単価が安く、複雑な形状を安定した品質で製造できるため、広く普及しています。プラスチック、主に熱可塑性ポリマーが原料として使用され、着色したり添加物を充填したりすることができます。

高度な設計上の柔軟性が求められます。射出成形は、CNC機械加工のような他の製造プロセスと比較して、表面のテクスチャーや素材のバリエーションが非常に豊富です。

射出成形

射出成形設備

技術的な面では、射出成形プロセスには射出成形機と、製造する部品のために専用に作られた金型が必要です。

射出成形機

射出成形機は、射出装置、金型、型締ユニットまたは突出ユニットの3つの主要部品で構成されています。

射出ユニット内では、ホッパーが射出ラムまたはスクリュー式プランジャーと加熱ユニットにプラスチックを供給します。必要量の溶融プラスチックが溜まったら、射出プロセスに入ります。

材料は熱/せん断によって溶解され、高圧で金型に注入されます。そこで射出成形部品が形成されます。

型締ユニットまたは突出ユニットは、金型の開閉と成形品の突出を行います。トグルタイプの型締ユニットが最も一般的で、金型を保持するプラテンで構成されています。これらのプラテンは通常、射出成形機のフレーム上に垂直に配置され、強力な型締力を発揮する内部プレスに例えることができます。あるいは、ストレート油圧式型締装置では、油圧シリンダーを使用して金型に型締力を与えます。

射出成形機には射出装置、金型、型締ユニットの3つの主要部品があります。

型締力

型締力は数トンから数千トンに及びます。このような広い範囲から、プレス機は一般的に、機械が発揮できる型締力のトン数で分類されます。特定の部品を成形するのに必要なトン数は、その型打ち面積によって決まります。

経験則では、ほとんどの製品で1平方インチあたり通常5トンです。ただし、硬度が非常に高いプラスチック材料の場合は例外で、金型を閉じた状態に保つためにより高い射出圧力と型締力が必要になります。大きな部品には、より大きな型締力が必要です。

ENGEL MACHINERY INC.のデュオスピードは、洗練された射出成形機の優れた例です。画像は許可を得て使用。

金型

金型は、単に「ツール」と呼ばれる場合もあり、プロセス全体の心臓部です。これは中空になった金属ブロックで、そこに溶融プラスチックを注入して目的の形状を作ります。金型には、温度調節とガス抜きのために多数の穴が開いています。温度は、水、オイル、ヒーターを使って制御します。

最も単純な形では、金型は2つの部分で構成されます。

  1. キャビティ(正面)と
  2. コア(背面)。

一方、射出成形部品には通常2つの面があります。

  1. 部品のA面は、通常、見た目が良い方が空洞に面しています
  2. B面機能面とも呼ばれ、通常、部品の隠れた構造要素が含まれています。そのため表面は粗く、突き出しピンの跡が残っている場合も多いです。

溶解したプラスチックはスプルーを通って金型に流れ込み、キャビティに充填されます。通常、射出成形サイクルの約半分を占める冷却と固化の後に、金型が開かれ、成形された部品が排出されます。

金型は通常、キャビティとコアの2つの部分で構成され、これらが一体となって成形品の形状を決定します。
金型は射出成形プロセスの心臓部です。金型の使用材料は、使用量や使用条件によって異なります。

参考情報

金型は製造コストが高く、そのため、数千から数百万個の部品を大量生産する場合に使用されます。通常、硬化鋼またはプリハードン鋼で製作されますが、アルミニウムやベリリウム銅合金で作ることもできます。

金型材料

スチール製の金型は製造コストがかかりますが、寿命も長いです。より多くの部品を生産できるのであれば、スチール製の金型にかかるコストは、追加費用を十分に相殺することができます。硬化鋼の金型は耐摩耗性と耐久性に優れています。プリハードン鋼金型は耐摩耗性が低く、少量の部品または大きな部品に使用されます。

安価なアルミ金型は、数万から数十万個の部品を製造するのに経済的でしょう。ベリリウム銅合金は、急速に放熱する必要がある場合や、せん断熱が高い場合に使用されます。

金型設計

金型は写真のネガに例えることができます。金型の表面構造と形状が完成部品に転写されます。また、材料フロー用のゲートシステムや内部冷却チャンネルなどの機能も備えています。

何千、何百万もの部品を高い精度と再現性で生産するためには、金型メーカーは膨大な専門知識を必要とします。なぜなら、金型は肉厚、コーナー、リブ、アンダーカット、スレッドなど、さまざまな検討事項があり、非常に複雑なものになることもあるからです。射出成形の立ち上げコストの大部分を金型が占めるのも、この開発費の高さが理由です。

金型のコストは大幅に変動する可能性があります。少量生産用の単純な形状のストレート抜き金型は、比較的簡単に開発でき、コストも数千ドルです。大規模生産用で複雑な形状を持つさらに高度な金型は、格納可能なコアやインサートを必要とするため、はるかに高いコストがかかりますこれらの可動要素は、開口部や空洞などのオーバーハングを持つ部品を製造するため、上方または下方から金型に挿入されます。

金型設計は、機械メーカーまたは専門業者が社内で行うことが多く、原材料の検討や有限要素解析の活用が必要となります。金型メーカー、またはツールメーカーは、通常スチールやアルミニウムなどの金属から金型を作り、CNCフライス盤で精密に削り出して目的の形状に仕上げます。最近の3Dプリンティング材料の進歩により、従来の方法よりも低コストで小ロット用の金型を製造できるようになりました。

ランナーシステムとも呼ばれるゲーティングシステムは、流れと圧力を制御し、溶融プラスチックを金型に送り込みます。溶融プラスチックは、金型に入ると次のような流路を流れていきます。

  1. スプルー、
  2. メインランナー
  3. サブランナー、および
  4. ゲート、または「投入口」で、これは、サブランナーと金型のキャビティの間にある細い溝です。

また、射出成形プロセスでは、一般にコールドスラグウェルがコールドスラグを回収し、サブランナーやゲートの閉塞を防いで、残った高温の材料処理を複雑にすることなく金型のキャビティに流入できるようにします。

複数のパーツを製造するには、複数のスプルーが必要になることが多いです。スプルーシステムは突出後にパーツから切り離されます。射出成形は廃棄物の少ない製造方法であり、スプルーシステムだけが唯一の材料廃棄物となります。この廃棄物の一部は、素材によってはリサイクルや再利用も可能です。

ゲーティングシステム

金型メーカーは、部品の向き(A面 対 B面)、金型製造の容易さ、材料の選択、材料の流れ、部品のサイズ、トリミングの挙動、スクラップ・コストなど、さまざまな考慮事項に応じて、数種類のゲートの中から選択することができます。詳しくはBasiliusの射出成形ゲートガイドをご覧ください。

金型には、2つの主な目的を持つ閉鎖システムも含まれています。

  1. 1つめの目的は、射出中、金型の2つの部分をしっかりと閉じておくこと、
  2. 2つめは、射出成形品を金型から押し出すことです。

その後、排出された部品はベルトコンベアや容器に落下し、保管されたり、組み立てられたりします。

金型のさまざまな可動部分が100%揃うことはないため、射出成形されたほとんどすべての部品に以下の2種類の欠陥が見られます。

  1. 一つ目は分割線(金型の2つの半分が合わさる部分に現れる線)、
  2. 二つ目の蹴子痕は突き出しピンによって生じるものです。
ゲートの種類(抜粋)

成形

成形」という用語は、スプルー、コールドスラグウェル、ランナー、ゲート、およびパーツを形成する金型のキャビティ部分をすべて合わせたものに材料を充填することを指します。

材料によっては、スプルー、コールドスラグウェル、ランナー、ゲートの中身は廃棄されるか、あるいは再粉砕されて別の射出成形サイクルで再利用されます。

プロセスの特性

射出成形のプロセスサイクルは非常に短く、部品の大きさにもよりますが、数秒から2分程度です。そのプロセスは主に以下の4つのステップに分けられます。型締、射出、冷却、排出。

射出成形プロセス

ステップ1:型締

材料が金型に注入される前に、金型の2つの半分が型締ユニットによってしっかりと閉じられる必要があります。型締ユニットは、材料が射出される間、金型の半分をしっかりと押し付けます。型締力の大きい大型機は、閉じるのに時間がかかります

ステップ1:型締

ステップ2:射出

原料(通常はプラスチック顆粒)は射出装置から金型に運ばれ、そこで熱と圧力によって溶解されます。溶融プラスチック(ショット)は、スプルーシステムを通って金型に注入され、キャビティ全体を満たします。

ステップ2:射出

ステップ3:冷却

金型内では、溶融プラスチックが金型内面に接触すると同時に冷え始めます。材料が冷えると、再び固まって、形ができます。必要な冷却時間が経過するまで、金型は閉じたままです。

ステップ3:冷却

ステップ4:排出

冷却された部品は、排出システムを使って金型から排出されます。金型を開くと、成形品は機構によって金型から押し出されます。ゲートの設計によって、部品は成形品の他の部分から自動的に分離されるか、切断することで分離されます。

排出後、ベルトコンベアーで成形品を保管組立、または後処理するため移動させます。同時に、金型は次のショットのために再度閉じられ、射出成形プロセスが繰り返されます。射出成形された部品は、すぐに使用できる場合もあれば、さまざまな後処理が必要な場合もあります。

ステップ4:排出

射出成形の種類

従来型射出成形と非連続型射出成形

従来型の射出成形では、射出は一定の圧力で行われ、金型のキャビティに充填され圧縮されます。 しかし、その結果、成形品の寸法がサイクルごとに大きく変わってしまう可能性があります。

非連続型射出成形では、射出プロセスを2つの段階に分離することで、部品の寸法とショット間の一貫性の制御を高めています。

  1. 速度制御でキャビティに約98%まで充填し、次に
  2. 残りの2%を圧力制御で充填します。

非連続型射出成形は科学的射出成形とも呼ばれます。

単成分射出成形と多成分射出成形

プラスチックの射出成形は、単成分射出成形と多成分射出成形に区別されます。多成分射出成形は、使用する材料の数によって、2K射出成形3K射出成形などに区別されます。

2Kとは2液射出成形のことで、硬い材料(PPなど)の周りに柔らかい材料(TPEなど)を成形します。3Kは2Kに似ていますが、レイヤーやコンポーネントが追加されます。

欠陥の可能性

射出成形プロセスでは、機械に依存する欠陥、材料に依存する欠陥、または機械と材料の両方に依存する欠陥など、さまざまな欠陥が発生する可能性があります。

以下のセクションでは、欠陥をある程度分類し、その例を紹介します。実際には、成形部品の欠陥の原因には非常に多くの可能性があり、そのすべてを文章で説明することは非現実的です。

機器に依存する欠陥

機器に依存する欠陥は、技術的な理由によるものです。例えば、射出圧力が高すぎたり、金型の型締力が低すぎたりすると、余分な溶融材料が金型から逃げてしまうことがあります。これはフラッシュまたはフラッシングと呼ばれる欠陥です。

冷却にムラがあると、部品に反りが生じることがあります。金型設計や成形プロセスが、冷却中に通常発生する収縮を正しく考慮していない場合、部品に反りが生じることがあります。

成形品に気泡ができるのは、金型や材料が熱すぎる場合です。この欠陥は通常、機械に関連したもので、金型周辺の冷却不足や、ヒーターが意図したとおりに作動していないことが原因です。

フラッシュ
反り

材料に依存する欠陥

ポリマーの劣化は、材料に依存する欠陥の一例です。材料の加水分解、酸化、またはその他のポリマー劣化が原因となり、成形品にひび割れ、変色、または同様の欠陥が生じます。

材料に依存するもう一つの欠陥が、ショートショットです。射出成形機内に十分な材料がない場合、成形品には未充填部分が生じてしまいます。あるいは、流量不足が原因の場合もあります。

ポリマーの劣化
ショートショット

機器と材料に依存する欠陥

機器と材料は互いに影響し合うため、双方に起因する欠陥が発生することはよくあることです。例えば、冷却速度が速すぎる場合、機器に依存した欠陥としてヒケが発生することがあります。このため、中心部の材料が所定の位置に流れる前に、部品の表面が固まってしまうことがあります。あるいは、充填樹脂や強化樹脂のように、収縮やヒケが発生しやすい材料もあるため、材料に起因する欠陥である可能性もあります。

蹴子痕の原因となる機器関連の欠陥の例としては、金型の設計不良(特にゲート)、突き出しピンの設計不良、金型のメンテナンス不良などがあります。一方、脆さや耐衝撃性の低さなど、材料に起因する欠陥も蹴子痕につながる可能性があります。

繰り返しとなりますが、この欠陥とその理由の羅列は不完全なものです。私たちはいくつかの例を紹介しているに過ぎません。

ヒケ
蹴子痕

参考情報

クラレの原料は、射出成形における成形品の欠陥低減に役立つ優れた添加剤です。流動性や収縮といった重要な材料特性を改善することができます。

射出成形材料

すべての熱可塑性プラスチック、および一部の熱硬化性プラスチックエラストマーは、射出成形に適した材料です。

射出成形で最も頻繁に使用される熱可塑性プラスチックは、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)です。

2Kおよび3K射出成形用の「柔らかい」材料としては、熱可塑性エラストマー(TPE)が最も多く加工されています。

射出成形に熱硬化性樹脂が使われるのは、かなり珍しいことです。その理由は、架橋密度が高いこと、再溶融して形を変えることができないこと、などです。しかし、一部の熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂部品の特性を向上させるなど、特定の用途で添加剤として使用されています。

その材料は通常、小さなペレットまたは微粉末として入手することができます。液体の場合もあります。さまざまな添加剤を添加することで、成形品の特性や材料の加工性を向上させることができます。添加物の例としては、色をつけるための着色剤や、硬さを増すためのガラス繊維などが挙げられます。しかし、クラレの特殊エラストマーなど、さらに高度な添加剤もあります。

それぞれの材料は、目的の成形品を得るために、加工時に異なるパラメータを必要とします。これらは、射出温度、射出圧力、金型温度、排出温度、およびサイクルタイムなどを含みます。これらのパラメータをどのように設定するかによって、成形品の外観、寸法、機械的特性が大きく変化します。適切な技術に加えて、多くの経験が必要とされます。

材料ピラミッドは、様々な射出成形可能なポリマーの異なる特性と、それらがどの用途に適しているかを示しています。

熱可塑性エラストマー

熱可塑性エラストマー(TPE)は、ゴムのような弾性と熱可塑性プラスチックの加工性を有する材料です。つまり、輪ゴムのように伸ばしたり、溶かしてさまざまな形や大きさに成形したりすることができるのです。冷めても弾力性は保たれます。必要であれば、後で再溶融し、再度成形することができ、加工時の材料廃棄物の削減にもなります。

TPEは加工しやすいため、射出成形に適した優れた材料です。ゴムとは異なり、硫という時間のかかるゴムの加工方法は不要です。多様な用途があるため、多くの産業や目的に適した素材です。

さまざまな種類のTPEの材料特性の詳細については、以下の表を参照してください。

この概要では、TPEが他の素材とともにどのように分類されるかを示しています。
特性/材料TPSTPOTPVCTPUTPCTPA
ショア硬度30A 〜 70A60A 〜 95A40A 〜 70A80A 〜 80D90A 〜 70D40D 〜 65D
引張強度(MPa)9.8 〜 34.32.9 〜 18.69.8 〜 19.629.4 〜 4925.5 〜 39.211.8 〜 34.3
伸び(%)500 〜 1,200200 〜 600400 〜 500300 〜 800350 〜 450200 〜 400
反発弾性(%)45 〜 7540 〜 6030 〜 7030 〜 7060 〜 7060 〜 70
密度(g/cm³)0.91 〜 0.950.881.2 〜 1.31.1 〜 1.251.17 〜 1.251.01
耐摩耗性
室温での曲げ抵抗
耐熱性〜 80°C〜 120°C〜 100°C〜 100°C〜 140°C〜 100°C
耐油性
耐候性⨯ 〜 ○△ 〜 ○△ 〜 ○
脆化温度< -70°C< -70°C-50°C 〜 -30°C< -70°C< -70°C< -70°C
用途フットウエア、樹脂ブレンド、接着剤、アスファルト改質剤自動車用ホース/チューブ、日用品自動車用ワイヤ・ケーブル、土木・建築フットウエア、工業製品、日用品、医療製品自動車、エレクトロニクス、工業製品スポーツ用品、工業用品
他のTPEと比較したSBCの特性|出典:Takemura, Y:日本ゴム協会誌, 83, 269-276 (2010).を一部修正

クラレの熱可塑性エラストマー

クラレは、より優れた材料特性を実現するために、射出成形用の高機能プラスチックを提供しています。完成部品であれ、柔軟なPVC/ゴム代替品であれ、これらのプラスチックの主要な特性は、製品に真の付加価値を与え、プロセスの効率化に役立ちます。

クラレの素材は、大規模なプラスチック部品の効率的な生産を促進します。クラレは、2K射出成形用として、柔軟な機能部品としての高機能TPEを提供しています。

セプトン™

セプトン™は、クラレが開発したスチレン系熱可塑性エラストマーです。水素添加スチレン系ブロック共重合体(HSBC)は、スチレン系硬質ブロックと水添ジエン系軟質ブロックで構成されます。HSBCは、硬質ブロックがポリスチレンのガラス転移温度以下の架橋点として働き、軟質ブロックが弾性を与えるため、ゴムのような弾性を示します。水素化により、優れた耐熱性と耐候性を実現します。

セプトン™

メリット

ポリオレフィンにセプトン™と可塑剤を添加することにより、良好な射出成形性柔軟な成形品を得ることができます。

セプトン™のSEEPSグレードを使用することで、エンボス転写性が向上し、インサート成形における接着性も改善されます。

セプトン™ BIOシリーズ

セプトン®バイオシリーズは、クラレ独自の水素添加スチレン-ファルネセン系ブロック共重合体(HSFC)であり、クラレはバイオベースのHSBC材料市場で最初かつ唯一のメーカーです。セプトン™ BIOシリーズの熱可塑性エラストマーは、バイオ由来成分を多く含む新しい化合物や最終用途を可能にし、既存の市場分野を拡大し、新しい市場分野を開拓する、メーカーにとっての新しいソリューションです。

その他のメリットについては、セプトン™に関する前セクションを参照いただくか、営業部にお問い合わせください。

セプトン™ BIOシリーズ
ハイブラー™

ハイブラー™は、ポリスチレンの末端ブロックビニル結合リッチポリジエン中間ブロックで構成される、実にユニークなトリブロック共重合体です。室温付近でtanδのピークを示すため、ハイブラー™は、可塑剤が配合されていなくても、高い振動減衰特性と衝撃吸収特性を示します。これらのTPEは、耐久性のある水添系銘柄と未水添系銘柄があります。

ハイブラー™

メリット

ポリプロピレンに少量のハイブラー™を添加することで、結晶化度を下げ、透明性を向上させることができます

透明なTPE、クラリティ™

クラリティ™は、クラレ独自のリビングアニオン重合技術により、各種(メタ)アクリレートをA-B型またはA-B-A型のブロック共重合体に結合させたアクリル系ブロック共重合体の新シリーズです。熱可塑性エラストマークラリティ™は、その構造上、優れた透明性、耐候性、自己接着性、他の極性材料との良好な相溶性など様々な特性を発揮します。

クラリティ™単独でも射出成形が可能です。ただし、クラリティ™はPC、PC/ABS、PLA、HSBC、PVCなどの極性プラスチック樹脂への添加剤としても使用でき、柔軟性とメルトフローを向上させることができます。クラリティ™を使用した混合物は、低分子量樹脂に比べて高い耐衝撃性を特徴としています。可塑剤に比べ、ブリードアウトが少ないです。

クラリティ™

コアシェル・ゴムと比較した利点

  • 成形部品は優れた表面外観と高い光沢が得られます
  • 薄肉成形性と大型成形性の向上
  • フローマーク欠陥の低減
  • 成形部品の残留応力低減
  • 耐ソルベントクラック性の向上

液状ゴム

液状ゴムは、ゴムやプラスチックの「反応性可塑剤」または改質剤として広く使用されており、射出成形にも使用できます。液状ゴムは低分子量の液状ポリマーで、固形ゴムと同じ化学構造を持ちます。

液状ゴムは、室温では液状ですが、鎖の伸長と架橋によりゴムのような性質を示します。液状ゴムの例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 液状ブタジエンゴム、液状イソプレンゴム、液状スチレンブタジエンゴムなどの液状ジエン系ゴム
  • 液状シリコーンゴム
  • 液状オレフィンゴム
  • 液体ウレタンゴム

クラレ液状ゴム

クラレ液状ゴムは架橋可能な液状ゴムです。液状ブタジエンゴム(L-BR)、液状イソプレンゴム(L-IR)、液状スチレンブタジエンゴム(L-SBR)で構成されます。液状ゴムは無色透明でほとんど無臭で、VOC値も低いです。ブタジエン、イソプレン、スチレンのポリマーは分子量が低く、固形ゴムと可塑剤の中間に位置します。

クラレ液状ゴム製品は「反応性可塑剤」として設計されています。時間と手間のかかるゴム混合プロセスにおいて、ムーニー粘度を下げ、混合プロセスを容易にします。その結果、化合物の流動性が向上し、所要時間が短縮され、処理コストが削減されます。

また、クラレ液状ゴム製品はベースゴムとの共加硫が可能で、移行性を抑制します。移行性が大幅に減少したことで、製品の保存期間と耐久性が大幅に向上します。

クラレ液状ゴムはゴム配合物の射出成形に適しています

クラレ液状ゴム

メリット

クラレ液状ゴムーは、ゴム配合物の射出成形プロセスをいくつかの方法で向上させることができます。

  1. 流動性: 加工助剤として、溶融粘度を下げ、ゴム配合物をより流動的にし、金型のキャビティに注入しやすくします。これにより、材料が金型の空洞の狭い隅々まで届き、表面が目に見えて改善され、その結果、金型がより正確に再現されます。
  2. エネルギー消費の削減: 配合物の流動性が向上することで、混合・成形プロセスの効率が大幅に向上します。クラレ液状ゴムは成形温度を下げることができ、エネルギー消費を抑えることができます。
  3. 特性と性能: クラレ液状ゴムは最終ゴム製品の特性や性能、すなわち耐摩耗性や低温での柔軟性を向上させることができます。さらに、クラレ液状ゴムは通常の可塑剤と比較して、移行性を低減し、最終ゴム製品の保存性や耐久性を向上させることができます。

参考情報

ゴム配合物に添加するクラレ液状ゴムの最適添加量はさまざまな要因によって異なります。お問い合わせクラレ液状ゴムが射出成形でどのような結果をもたらすかについて、詳しくはお問い合わせください!

液状ファルネセンゴム

持続可能性を重視しますか?

液状ファルネーゼゴム(LFR)は、再生可能な天然原料をベースにしています:再生可能なモノマーであるβ-ファルネセンの重合体を含んでいます。確立された発酵プロセスにより、独自の酵母株がサトウキビなどの糖源をβ-ファルネセンに変換します。

液状ファルネセンゴムは、標準的な可塑剤よりも分子量が大きい反応性可塑剤として機能します。液状ファルネセンゴムは共加硫可能で、移行性を大幅に低減させることで、ゴム配合物の耐久性を向上させます。

当社の製品とその優れた加工能力について、さらに詳しくお知りになりたいですか?クラレ担当者までご連絡ください。

液状ファルネセンゴム

その他の材料

プラスチックだけでなく、金属などさまざまな材料を射出成形に使うことができます。しかし、金属の射出成形プロセスは、一般的にダイカストと呼ばれています。

射出成形:利点

射出成形の主な利点は、部品を大量に生産できることです。数百個の小ロットから数百万個の大量生産まで、幅広い用途に対応します。

初期投資が償却されれば、この製造方法では単価は極めて低くなります。ユニット数が増えれば、単価を大幅に下げることができます。これにより、このプロセスは非常に生産的なものとなります。

射出成形のその他の利点には、高い再現性と耐久性、幅広い材料、低いスクラップ率、成形品の魅力的な外観などがあります。

デメリット

射出成形の大きな欠点は、金型製作にかかるスタートアップ費用が高いことです。

また、プロセスに適合させるために金型の設計を変更する必要がある場合や、設計ミスが生じた場合にも、コストがかかる可能性があります。小さなミスでも、ここでは大きなコストにつながります。

その他の欠点としては、スタートアップに時間がかかること、大型の金型では制約を受ける可能性があることなどが挙げられます。

用途

射出成形は、消費財(歯ブラシ)、家具(椅子)、自動車(ダッシュボード)、電子機器(電動工具のハウジング)、玩具(プラスチック積み木)、ヘルスケア(注射器)、包装(スクリューキャップ)など、さまざまな業界で使用されています。

接着剤、コーティング剤、シーリング材

Compounding

コンパウンド

日用品

Electronics

電子機器

工業・建築

Mobility

自動車

Oil Modification

オイル改質

パーソナルケア&衛生

Sporting Goods & Footwear

スポーツ用品・靴

3D Printing

3Dプリンティング

歴史

射出成形の発明者はアメリカのジョン・ウェスリー・ハイアットです。1871年、兄のアイザイアとともに最初の射出成形機の特許を取得しました。当時はまだ、加熱されたシリンダーからピストンを使ってプラスチックを金型に注入するという、かなり単純な機械でした。ボタン、櫛、ビリヤードのボールなどの製造に使われました。

1903年、ドイツの化学者アーサー・アイヒェングリューンセオドア・ベッカーは、粉末状で容易に射出成形できる最初の可溶性酢酸セルロースを発明しました。1919年に初の射出成形用プレスを開発し、その20年後に可塑化酢酸セルロースの射出成形で特許を取得したのもアイヒェングリューンでした。

第二次世界大戦中、安価な大量生産品への受容の高まりから、この産業は力強く拡大しました。1946年、アメリカのジェームズ・ワトソン・ヘンドリーは、最初のスクリュー射出成形機で画期的な開発を行いました。射出速度と成形品の品質をより正確に制御できるだけでなく、射出前に材料を混合することも可能になりました。

1970年代にヘンドリーが開発したもうひとつの技術、ガスアシスト射出成形法は、複雑な中空成形品の製造を可能にし、射出成形部品の設計の柔軟性、強度、表面仕上げを大幅に改善しました。

今日、射出成形は年間数千億ドルを売り上げる世界市場です。世界では、毎年およそ5,500万トンのプラスチックがこの方法で加工されています。

米国特許第114945号:ビリヤード・ボールのセルロイド射出成形、1871年5月16日。
ジェームズ・ワトソン・ヘンドリーによるスクリュー射出成形機の特許図面。

規格と認証

射出成形サービス業者の資格を確認できる認証は数多くあります。特に重要なのはISO9001認証です。

米国プラスチック工業会(SPI)は、さらに米国のプラスチック業界向けにプラスチックの光学的品質に関する基準を定めています。この規格は、射出成形プラスチック部品の表面品質を4つのカテゴリーに分け、12種類の表面品質を区別して定義しています。

コスト

射出成形は、成形部品を大量に生産する上で、大きな利点があります。しかし、このプロセスを選ぶ人は、スタートアップのコストにも注意する必要があります。初期投資が非常に高額になります。射出成形機に加え、金型にかかる費用は特に大きく、時には数百万円にもなります。

以下はあなたにとって興味深いかもしれません。クラレは、射出成形プロセスの可能な限り高い収益性を実現するために、サイクルタイムの短縮と生産の最適化を実現する配合物の開発をサポートします。

作りたい製品の明確なイメージはあるものの、材料の配合や構成に自信がないですか?それでしたら、クラレの担当者にご連絡ください。必要であれば、私たちのプロセスや材料に関する専門知識を駆使し、サプライチェーンの編成をサポートさせていただきます。

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スチレン系ブロック共重合体とは?

スチレン系ブロック共重合体とは?

スチレン系ブロック共重合体(SBC)は、熱可塑性エラストマー(TPE)の一種で、広く使われているポリマーです。TPEは、ゴムのような弾性を持ち、優れた加工性を有する熱可塑性材料です。

SBCは、TPS(Thermoplastic Styrenic Elastomers;熱可塑性スチレン系エラストマー)と呼ばれるTPEコンパウンドのベースポリマーとして使用されます。 TPSは、やはりTPSと略される熱可塑性デンプン(Thermoplastic Starch)と混同されやすいので注意してください。

分子構造的には、SBCは一般的に硬い熱可塑性ポリスチレンのエンドブロック2つと、柔らかいエラストマーのミッドブロック1つから構成されています。とはいえ、さまざまなブロック構成をとることができます。

  • ジブロック(ポリスチレンブロック-エラストマーブロック)
  • リニアトリブロック(ポリスチレンブロック-エラストマーブロック-ポリスチレンブロック)
  • 放射状構造などの多様な分岐構成
SBCの典型的なブロック構成

特性

この表は、SBCの特性を他のTPEと比較したものです。

特性/材料TPSTPOTPVCTPUTPCTPA
ショア硬度30A 〜 70A60A 〜 95A40A 〜 70A80A 〜 80D90A 〜 70D40D 〜 65D
引張強度(MPa)9.8 〜 34.32.9 〜 18.69.8 〜 19.629.4 〜 4925.5 〜 39.211.8 〜 34.3
伸び(%)500 〜 1,200200 〜 600400 〜 500300 〜 800350 〜 450200 〜 400
反発弾性(%)45 〜 7540 〜 6030 〜 7030 〜 7060 〜 7060 〜 70
密度(g/cm³)0.91 〜 0.950.881.2 〜 1.31.1 〜 1.251.17 〜 1.251.01
耐摩耗性
室温での曲げ抵抗
耐熱性〜 80°C〜 120°C〜 100°C〜 100°C〜 140°C〜 100°C
耐油性
耐候性⨯ 〜 ○△ 〜 ○△ 〜 ○
脆化温度< -70°C< -70°C-50°C 〜 -30°C< -70°C< -70°C< -70°C
用途フットウエア、樹脂ブレンド、接着剤、アスファルト改質剤自動車用ホース/チューブ、日用品自動車用ワイヤ・ケーブル、土木・建築フットウエア、工業製品、日用品、医療製品自動車、エレクトロニクス、工業製品スポーツ用品、工業用品
他のTPEと比較したSBCの特性|出典:Takemura, Y:日本ゴム協会誌, 83, 269-276 (2010).を一部修正

機械的特性

SBCの基本的な機械的特性は、ゴムのような弾性優れた柔らかさの組合せです。そのため、スポーツ用品やフットウエア日用品自動車エレクトロニクス医療 用途など、さまざまな産業におけるソフトタッチの用途に適しています。全リストは以下を参照してください

より高い硬度と機械的強度を必要とする用途には、TPU、TPC、TPAなど他のTPEの方が適していることがあります。

密度

SBCはTPU、TPA、TPC、TPVCに比べて密度が低く、TPOやTPVと同程度の密度です。

熱特性

SBC耐熱性は、エンドブロックの化学構造とガラス転移温度に依存します。最高使用温度は〜80℃です。脆化温度とは 、ポリマーがゴムのような状態から、より硬く壊れやすいガラス状態へと転移する温度です。SBCは脆化温度が低いため、優れた耐衝撃性と柔軟性を必要とする低温用途に使用できます。

実測値については、上記の表を参照してください。

分子量分布

TPSがリビングアニオン重合で製造されるため、SBCは他のTPEに比べて分子量分布幅が狭くなっています。

加工性

SBCは 射出成形押出成形押出ブロー成形3Dプリントが可能です。このような加工性を備えていることに加え、優れた性能特性を備えていることから、SBCは多くの産業において幅広い用途に選択される優れた材料となっています。

SBCは溶融と再成形が可能なため、リサイクルが可能で、低廃棄物処理も可能です。

エラストマー特性を持つ材料の加工は、百数十年の間に大きく変化してきました。ゴムの加硫は時間とエネルギーを要するプロセスです。
今日、SBCのような材料は、射出成形などの技術を使って工業規模で加工することができます。

SBCと他の材料の比較

SBCは、シリコーン、EPDM、天然ゴムとは異なり、架橋を持たない熱可塑性エラストマーです。しかし、SBCはその分子構造によって弾性を示します。

スチレン系ブロック共重合体開発の歴史

1962年、SBCの初期の特許のひとつがシェルUSA社によって出願されました。(US3265765)。1964年、スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体(SBS)がシェルのパイロットプラントで製造され、翌年にはシェルによって商業化されました。SBSの最初の顧客は、マサチューセッツ州の靴メーカー、スコッティ・シューズでした。1964年には、水素添加スチレン系ブロック共重合体(HSBC)の最初の特許のひとつも出願されました(US3431323)。1960年代後半、HSBCは商業規模で利用できるようになってきました。

製造方法

SBCはアニオン重合によって製造されます。アニオン重合は、精密にデザインされた構造と目的に合わせた材料特性を持つポリマーを合成するための、汎用性の高い強力な技術です。

SBCの種類

SBCには2つのカテゴリーがあります。

  1. 非水素添加スチレン系ブロック共重合体(USBC)
  2. 水素添加スチレン系ブロック共重合体(HSBC)

USBCとは?

非水素添加スチレン系ブロック共重合体(USBC)は、スチレンとジエンのモノマー単位がブロック状に配列した構造からなっています。ジエンブロックはポリブタジエン(PB)、ポリイソプレン(PI)のどちらも可能です。USBCは水素添加工程を経ていないので、不飽和ジエンブロックを保持しています。

このため、水素添加されたものと比べて反応性が高く、架橋や官能基化などの化学反応によってさらにカスタマイズが可能です。HSBCに比べて優れたエラストマー特性を示し、加工コストも低くなっています。

しかし、不飽和ジエンであり、劣化しやすいので、熱安定性耐薬品性が低く経年劣化の影響を受けやすくなっています。USBCは、時間の経過とともに黄色味を帯びやすくなります。これは、用途によっては問題になりませんが、透明なTPEが好まれる包装や医療などの用途では問題となります。

USBCの種類

略語分子構造クラレの製品
SBSスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体 該当なし
SISスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体 該当なし
V-SISビニル結合に富むスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体ハイブラ-™ 5000シリーズ

HSBCとは?

水素添加スチレン系ブロック共重合体(HSBC)は水素添加工程を経て、ジエンブロックの不飽和結合を化学的に飽和させます。これにより、ジエンブロックは、エチレン/ブチレン(EB)、エチレン/プロピレン(EP)、エチレン/エチレン/プロピレン(EEP)などの飽和ブロックに変換されます。

その結果、HSBCはUSBCに比べて 熱安定性耐久性耐候性耐薬品性UV耐性が向上しています。黄変もかなり少なくなっています自動車エレクトロニクス医療などの産業における特に要求の厳しい用途には、より良い材料となる可能性があります。

水素化処理工程が追加されるため、HSBCはUSBCに比べて加工コストが高くなる可能性があります。一旦水素化されると、SBCは反応性が低下するため、さらなる化学修飾や架橋オプションの利用が制限されます。

HSBCペレット

HSBCの種類

略語分子構造クラレの製品
SEPスチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体セプトン™ 1000シリーズ
SEPSスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体セプトン™ 2000シリーズ
SEEPSスチレン-エチレン/エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体セプトン™ 4000シリーズ
SEBSスチレン-レン/ブチレン-スチレンブロック共重合体セプトン™ 8000シリーズ
V-SEPSビニル結合に富むSEPS ハイブラ-™ 7125F
V-SEEPSビニル結合に富むSEEPSハイブラ-™ 7311F
特殊グレードセプトン™ Vシリーズ
セプトン™ Jシリーズ
セプトン™ Qシリーズ
セプトン™ BIOシリーズ

SBCの用途

接着剤、コーティング剤、シーリング材

Compounding

コンパウンド

日用品

Electronics

電子機器

工業・建築

Mobility

自動車

Oil Modification

オイル改質

パーソナルケア&衛生

Sporting Goods & Footwear

スポーツ用品・靴

3D Printing

3Dプリンティング

クラレのSBCをご覧ください

〈セプトン®〉

高機能熱可塑性エラストマー

〈セプトン®〉 BIO-シリーズ

バイオ由来熱可塑性エラストマー

〈ハイブラー®〉

高ビニル高機能熱可塑性エラストマー

医療用SBC

特定のグレードのSBCは、規制要件をクリアし、さまざまな医療用途(皮膚接触、血液接触など)で承認されています。

詳細については、医療グレードTPEのページをご覧いただくか、お問い合わせください。弊社の専門家が喜んでアドバイスいたします。

医療機器とチューブにおけるエラストマー

ホットメルト接着剤中のSBC

ホットメルト接着剤もSBCの一般的な用途です。SBCは、接着性を提供するために不可欠な成分です。クラレは、加工性と性能特性に優れた材料を提供しています。

ホットメルト接着剤に関するその他の資料はこちらをご覧ください。

ポリマー改質に使用されるSBC

SBCは広範な汎用性を備えているので、お客さまは幅広い業界の特定の用途に合わせてポリマーを調整することができます。自動車部品から包装材料、建設製品から 日用品に至るまで、SBCは数え切れないほどの革新的なソリューションでその価値を証明してきました。

SBCをポリマーブレンドに組み込むことで、お客さまは製品の寿命と耐久性を向上させ、頻繁な交換を不要にし、廃棄物を最小限に抑えることができます。SBCは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)の改質剤として有用です。

耐衝撃性と柔軟性を改善したSBCによって、より長寿命で耐久性の優れた製品開発が可能になり、環境負荷の低減につながります。

SBCはまた、軽量かつ強靭なポリマー・ソリューションの創出を可能にし、全体的な材料消費量と二酸化炭素排出量を削減します。その汎用性により、製造工程におけるエネルギー消費を削減することで、加工特性を最適化することができます。ポリマー改質剤としてのSBCの詳細については、こちらをご覧ください。

粘度指数向上剤として使用されるSBC

正確な粘度分布を得ることが目的の場合、SBCは非常に効率的で汎用性が高く、粘度調整剤として優れています。これらのポリマーは、低濃度で潤滑油の粘度を大きく変化させることが可能で、卓越した増粘能力をもたらします。

SBCの際立った特徴のひとつは、そのせん断安定性で、さまざまなせん断条件や温度範囲にわたって粘度が一定に保たれます。このため、安定性と信頼性の高い流量制御が極めて重要な、強い機械力を伴う用途に最適です。粘度指数向上剤としてのSBCについて詳しくはこちらをご覧ください。

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